レビュー
エンジニアらしい魔法
フォー アイ 0 トゥー 100 フォー ジェイ 0 トゥー 100 コール リトルフレイム エンド コール トランスファー エーテル エンド!
Ep2.魔王ヘルヴァーナ・リリィと魔科学 https://ncode.syosetu.com/n2222ka/2/ より
このフレーズ見た時に少し目が止まりました。そして、脳内で「For i = 1 to 100…」となった時にちょっと笑いました。
一気にシステマチックな世界観になったなぁと思ったのです。
その想像通りでした。この世界の魔法、特に詠唱周りは他の作品にない独創性を持っています。
小火炎”リトルフレイム”の魔法解説
主人公が半年かけて習得した唯一の魔法が小火炎です。Ep25「転送魔法の獲得」にて詳しく記載されていたので紹介します。
このエピソードでは賢者と呼ばれ、魔法の技能が卓越しているエルマという女性に弟子入りし、魔法について学ぶ話です。
主人公の絶望的なまでのセンスの無さを確認した師匠は、彼が出来る所を伸ばすために”小火炎”を用いて空間魔法を習得させることを目指します。
エルマは小火炎の魔法陣を生み出すと、外側に描かれた魔法陣を指さした。
「これが空間を入れ替える魔法陣、転送魔法とも言えるものじゃ。この魔法陣を使うことで、物体やエネルギーを異なる場所に瞬時に移動させることができる」
彼女はさらに続けた。「誰もこの本質に気づいておらんが、実のところ、魔法の詠唱というのは、この魔法陣に『宛先』と『対象』を刻むことに他ならん。この魔法陣の構造と詠唱を理解し、応用してみるのじゃ」
Ep25「転送魔法の獲得」
彼は自身が使える魔法の詠唱を確認します。
「オルフェスのプロメテ火山より、顕現せよ、炎の精霊の火ーー小火炎」
のような感じだ。詠唱の言葉は意味が同じなら多少異なっても構わない。ただし、転送の宛先と対象は、必ずこの詠唱に含める必要がある。例えば、『オルフェスのプロメテ火山』が宛先、そして『炎の精霊の火』が対象。簡単に言ってしまえば、最寄りの実在する火山から火を転送するということなのだ。
Ep25「転送魔法の獲得」
ここで彼は魔法の詠唱のルールを知り、自身の持つ知識を用いて”魔科学”を築いていくことになります。
こんな感じで魔法の仕組みは良く考えられていて、他作品と差別化されています。
主人公の強さの理由付けも適切で良いと思います。
ざまぁ成分は控えめで良かった
私は流行の”ざまぁ”がそれほど好きではありません。もちろん仕返ししたときのスカッとした気分は嫌いでは無いのですが、それを主軸にした作品は明るい気持ちになれないのが理由です。
おそらく当作品のざまぁ要素は皇帝だと思うのですが、一章後半にあっさり行われます。
個人的には丁度良い塩梅でした。
国造りがメインストーリー?
読んでいる範囲だと国造りがメインパートなのかな?と思います。公式あらすじにも、
魔王を支配下に置き、自由の国を立ち上げる。
と、書いてあります。
ただ、読んだ範囲だと内政要素はそれほど有りません。基本的には顔役だったり装置作成してインフラ貢献するといった具合。
これは好み分かれるかもしれませんが、私はこの作品はこの塩梅が良いのかなと思います。
ちょっと都合が良すぎる感じはする。
全体的にテンポの良い作品です。それはとても優れている点なんですが、その弊害か、”作者がこういう方に持っていきたい”という流れが見えてしまう様に感じます。
いくつか読んでいて感じた箇所の上げます。
皇帝の人柄
皇帝はクーデターによって権威失墜するのですが、基本的に屑で無能です。
主人公が転移した国の皇帝(取り巻きの貴族もですが)が無能すぎる。作中で褒めれる要素が全くありません。”こんなトップで国が回るわけないだろっ!”ってのが読んでいて素直な感想でした。
優秀すぎるキャラ
- 巳人のミーア
- 主人公が現地で助ける妹的な存在の女の子。性格や特殊技能が完璧。
- 創業者の老人だったハルト
- 先駆者の加護持ち、大企業を作り上げた彼はとてつもない行動力と商才を見せます。そうして性格もとても良いです。
この二人、隙が全くありません。だからか、嫌いじゃないんですが親近感沸きませんでした。
逆に、聖女と勇者は人間味が出てるから好きです。
転ばぬ先の杖みたいな
ちょくちょく主人公にも困難が訪れるのですが、その解決手段と既に出会っていることが多いように感じます。
魔王を拘束する首輪しかり、精密機械の購入資金となるNISAしかり、痩せた土地リザベルに向かう途中で見つける野ジャガイモしかり…魔王の得意魔法に対抗できる加護を持ち、その加護を別件で最大まで強化することで、その特異魔法の影響を抑えることが出来てるとか。
あまり主人公は困難な状況に陥りません。もうちょっと主人公の苦悩を描いても良かったんじゃないかなと思いました。
結びに
ここまで読んでいただきありがとうございます。
文章はとても読みやすく、テンポの良い物語。読んでいて疲れない作品ですね。実際、気が付いたら就寝時間になっていました。翌日の仕事が朝早かったから泣く泣くブラウザを閉じました。。。
特に好みだったのは、魔法の仕組みが独創性。作者のエンジニアとしての論理的な面が見れて満足です。
ぜひ、一度読んでみては如何ですか?

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個人的な評価(全作品統一)
没入感 | テンポ良くライトの表現が多いので読みやすい。 ただ、苦境は少ないのでハラハラ感はない。 |
ボリューム | 一話あたりはちょっと少なめ?一章は少なめに感じた。二章全体は良い塩梅だったので少し悩む。 168Ep時点で[2,079文字/Ep] |
構成 | 都合が良すぎる展開が気になる。が、流れは正統で王道。 |
キャラクターの魅力 | 登場キャラが”良い奴”と”悪い奴”でハッキリ分けられてるのが勿体ないと思った。 聖女と勇者が人間味感じれて私は好き。 |
更新ペース | 章区切りで数日休むようですが基本的に毎日投稿っぽいです。 1日あたり(25.1/25~25.7/30) ・0.9Ep ・1,877文字 |
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