レビュー
表現がきれい
この作品読んで最初に思ったことでした。
私が感じたことを上手く語源化する自信は、あまり無いので読んで感じて欲しいのですが、作品の表現が澄んでいます。そして鮮やか。読んでいて心地のよさを感じます。
粗末な紙を麻紐で綴じただけの帳面。
それに、木炭を細く削った棒。思い出すのも難しい幼い頃から、そのふたつさえあればアネシュカは十分だった。それゆえ、彼女はこの世を慈しんでいた。
[Ep2] 1 夏の朝、伝説の湖のほとり 冒頭から https://ncode.syosetu.com/n5918jm/2/
序章の次の話。実質的な第一話の冒頭がこのフレーズから始まります。この部分だけでアネシュカ(主人公)が絵を描くことが大好きな事が分かります。また、”この世を慈しんでいた”というフレーズも良いですね。あまり耳なじみのなくて印象に残りました。
しかし、そんな僻地の貧しい村の暮らしではあったが、アネシュカにとって日々は美しかった。たしかに、亜麻色の長い髪は日々の畑仕事に汚れ、細く白い指も泥に黒ずんではいる。粗末な綿のワンピースに至っては、もとからの色がわからないほどに煤けている始末だ。
しかし、そんな身なりをしつつも彼女の顔から笑みが失われることはなかった。
[Ep2] 1 夏の朝、伝説の湖のほとり から https://ncode.syosetu.com/n5918jm/2/
先の冒頭から数行後から抜粋。”もとからの色がわかあらないほどに煤けている始末”。貧しい村の暮らしぶりを示したうえ、”しかし、そんな身なりをしつつも彼女の顔から笑みが失われることはなかった。”と繋げることで「貧しいけれど今の生活が楽しい」と分かります。
とにかく表現が柔らかで、澄んでいて、鮮やか。ぜひ、Ep2「1 夏の朝、伝説の湖のほとり」だけでも読んで欲しい!!気に入ったフレーズを紹介するとEp2を全文コピーして貼り付けないといけなくなっちゃうぐらい素晴らしい第一話でした。

ちゃんと山場があるストーリーが良い。
この物語の第一章は主に3人の人間で回っていきます。
- 田舎から絵の修行に王都に出てくる主人公のアネシュカ
- 芸術の国で筆頭宮廷絵師を務める青年、ファニエル先生
- 芸術の国を武力制圧し代理統治を行うマジーグ総督
改めて、あらすじです。
芸術と文化の国チェルデに暮らす、絵を描くのが何より好きな少女アネシュカは、ある日村を訪れた宮廷絵師のファニエルに才能を見出され、王都にある彼の工房にて修行することとなる。ところが直後、兄弟国マリアドルがチェルデに進攻し征服。チェルデ総督としてやってきたのは冷徹な将軍、マジーグだった。マジーグはチェルデ総督となり着々と占領政策を進めるが、なぜかファニエルの工房には手を出さない。やがてマジーグとアネシュカは不思議な縁により巡りあう。マジーグの狙い、そしてアネシュカ、ファニエルの運命は如何に――?
アネシュカは自身の絵を認めてくれたこと、また、ファニエル自身の技術から彼を師として慕っています。そしてマジーグ総督とも絵を通して親しくなるのですが、Ep16【15 残酷な命が下る】で全てひっくり返ります。
このエピソードでかなり心に揺さぶりをかけてきます。想像していなかった展開。ファニエルへの不信感。アネシュカとマジーグの関係…。様々なことの先行きが見えなくなり、作品に引き込まれます!
この山場があったことでアネシュカとファニエルの絵に対する思い、それにマジーグの葛藤をより一層、感じれることで第一部読破後の深みが増したんだと思います。
**ちょこっとメモ**
ちなみにですが、作者さんはこの【15 残酷な命が下る】に出てくる”残酷な命”を書きたくて、この物語を考えられたそうですよ!
『作品は読者様を殴る鈍器』
これは作者の『つるよしの』先生のXプロフィール欄にある一節です。この文の通り。私は鈍器でぶん殴られましたね。第一部読破後の私の様子がコチラです。
没入できた作品を完結まで読み切った時独特のぶわぁ~とした気持ち良さって分かりますか?伝わりますか?ちょっと表現できているか自信がありませんが、あの感覚が味わえます。
ファニエルが人間らしくて好き
ファニエルがとにかくいい味出してます。
この第一章を読み切った時点で一番好きなキャラクターは彼です。彼の苦悩と重責、そして救い。最後ファニエルがアネシュカの絵を描いているシーンは考えさせられるものがありました。
彼のどこが好きか思うままに書いたらネタバレになりそうなので控えます。読破後の方でファニエルが好きな方、ぜひ連絡ください。語り合いましょう。
結びに
ここまで読んでいただきありがとうございました。
この作品は読破後の余韻が素晴らしかったです。山場があり、それを綺麗に終結させるストーリー。キャラクターの際立つ個性。どれをとっても胸を張って人に勧められる一作です。
そして、きっと過去には”残酷な命”のような命令があったんだろうな…と考えさせられる一作でもありました。
本作は完結済みです!ぜひ、未読の方は読んでみて欲しいです。勿体ないです。
そして、読み終わった後にもう一度”序章”を読んでみてください。見え方が変わってますよ。

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個人的な評価(全作品統一)
没入感 | ぶっとおしで読めました。 |
ボリューム | 読み応えあります。 1Epあたり:4,384文字 |
構成 | ストーリーで違和感を感じるところはありませんでした。途中で間延びする感じも無し。 |
キャラクターの魅力 | 主要キャラ少ないので良いですね。それぞれの立場で苦悩が描かれていて人間らしくて良いです。行動基準もそれぞれ違っているのも良い。 |
更新ペース | 完結済みなので評価不要。満点で。 |
1Epあたりの文字数と1日当たりのEp数及び文字数はExcelで計算しています。
計算で使用する値は「投稿開始日」「基準日(基本的には記事作成日)」「投稿Ep数」「総文字数(小説詳細から参照)」です。
単純に平均を取っているだけですので実態とズレている場合がありますので、参考程度に留めてください。
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