【成るもの、迎えるもの】二つの立場からみる異世界転生

作品感想

レビュー

稀人の存在について

 この作品の良さを説明するには、この稀人という存在を理解してもらう必要があります。

 稀人とは、ここではないどこか別の世界の記憶を持っている人間のことを指します。作品の世界で死ぬ寸前などで魂が抜けてしまった体に、日本等の現代社会で亡くなった人の魂が入ることで稀人として誕生します。

 主な特徴はこんな感じ

  • 人格の所有権は「新たに入った魂」。つまり現代日本人。
  • 体の持ち主の記憶は「新たに入った魂」へ引き継がれる。
  • 稀人はそれほど珍しい存在ではなく、一般人に周知されている。
  • 稀人が誕生するメカニズムはある程度解明されている。

成るもの、迎えるもの

 この稀人を考えるときに二つの視点があって、

1.体に入った日本人の魂側
 前世で死んで新しい体で生まれ変わった状態に。

2.元の体の持ち主を知っている側
 死の間際で急に前世の記憶を思い出して、人格が変わってしまう。造形や声は全く一緒なのに別人になってしまったと感じる。

 この、それぞれの視点が双方丁寧に描かれています。それも様々なシチュエーションで。稀人として上手くいっているケース、転生した先の家族と揉めたケースetc…。

立場による心情を、稀人に成るもの、稀人を迎えるもの、共に感じ取れることで、死とは何か。生きてるって何なのか。転生って。と様々考えさせられます。

緩そうなタイトルだけど中身はしっかりとしたヒューマンドラマ

 この作品「美少女店主はおっさんに戻りたい!~異世界転生の行き先はこちら~」なんてポップで軟派なタイトルですけど(注:完全な主観です)、中身は人間の内面をしっかり描いている硬派な一作です。

 身近な人が稀人になって、別人に変わってしまった…。それを想像できた時、この作品は面白くなります。

 作者さんのXポストに書いてあるのが分かりやすいです。

「みんな異世界に行くけど、異世界側にだって生活はあるよねとか。“転生”てつまり1回死んでるよねとか。そんなあれこれの小説。」

あんまり作品に関係ない話だけど…

 この作品、タイトル見て「こんな物語なんだろうなぁ」って想像していた内容と結構違ったんですよ。ぶっちゃけ、タイトルだけだと読まなかった一作でした。

 勿体ないなぁと思って、もっといいタイトル無いかな…って考えたんです(勝手ながら)。けど、この物語の主流は「女の子の体になってしまったおっさんが元の体に戻るために色々する話」なので、分かりやすく読者に伝えるにはこのタイトルしか無いと気が付きました。面白い点、独創的な点はそこじゃないのに…。こういうことあるんだなぁと思った次第です。

 だって、私もきっと、人にこの作品を説明するとき「女の子の体になってしまったおっさんが元の体に戻るために色々する話」って最初に言いますからね。

一度死んでる人が言うと説得力あるよね。

 この作品で私が好きなフレーズが幾つかありますが、今回は2個紹介したいと思います。

やまない雨はないかもしれない、けど、雨がやむ前に死んじゃうことはある。

「私はそんなに早く死ぬつもりはないから」と言う現地人に対して、稀人が返す一言。

「死んじゃうじゃない! つもりがなくても死んじゃうでしょ!?」

 この二つは私に響きましたね。

 特に2つ目。死ぬつもりが無くても人間は死ぬ。もし、その時が来ても後悔しないように日々過ごさないといけないと感じました。とりあえず、嫁に感謝の言葉を告げようと思います。

結びに

 ここまで読んでいただきありがとうございました。

 この作品は読んでいて「ドカン!」と衝撃を与えてくるタイプの作品ではありません。読破後の感動もそれほど強くありません。けれど、じっくりと考えさせられる一作でした。

 読んでてね、手が、止まるんですよ。登場人物に思いを馳せて。これが自分の妻だったら…親だったら…親友だったら…自分は稀人に対してどう思うのだろうかって。

 だからですかね、文字数の割に読むのに時間がかかりました。その分、私にとって印象に残る一作になりました。

 ただ、硬派だ!考えさせられる!って私は行っていますが、章ごとの結末は「クスッ」と来る感じなので後味は凄いあっさりですよ。内容と展開の割に凄い爽やかです。これも凄い事だと今レビューを書いてて思いました。シリアス度の塩梅がめっちゃいいです。

 最後に、ひとこと。

作者さん!第3章を心待ちにしてますから!
私の為に書いてください!お願いします!!
<(_ _)>

【第2章完結!】美少女店主はおっさんに戻りたい!~異世界転生の行き先はこちら~
R15 残酷な描写あり 異世界転生 異世界転移 集英社小説大賞6 スピアノベルス大賞1 パッシュ大賞 ほのぼの 魔法 日常 パラレルワールド HJ大賞6 ネトコン13 チートなし ハーレムなし 美少女 ネトコン13感想

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個人的な評価(全作品統一)

没入感 没入とはちょっと違う感覚かも。読んでるとき身近な人だったら…って考えてるから現実には戻ってきてる。
 まぁ没入感求めるタイプの作品じゃないと思うので気にする必要は無さそう。
ボリューム 良い塩梅でした。
1Epあたり:5,444文字
構成 この設定的に重めなストーリーになりそうなのに、後味すっきりに纏めるのは素晴らしいと思います。
キャラクターの魅力 それぞれキャラ立ちしてて良いです。敵キャラ含めてバックボーンしっかり描いているから納得できる行動している。
 お気に入りはアロイ。真が通ってるから好きです。
更新ペース 章の構想固まれば投稿していくタイプだと思います。中途半端で更新止まることは無さそう。

1日当たり[24/2/17-25/5/17]
・Ep:0.18
・文字:957

 1Epあたりの文字数と1日当たりのEp数及び文字数はExcelで計算しています。
 計算で使用する値は「投稿開始日」「基準日(基本的には記事作成日)」「投稿Ep数」「総文字数(小説詳細から参照)」です。
 単純に平均を取っているだけですので実態とズレている場合がありますので、参考程度に留めてください。

【成るもの、迎えるもの】二つの立場からみる異世界転生
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